ひとつ うつろい/木立 悟
 





手のひらが
土を打つ数
雨は聴きとどけ
遠去かる


短刀が
街の周囲を切り取り
顧みる場所さえなく
たたずんでいる


つづくようにと
想うだけですべては壊れる
願うことさえ できはしない
ただそのままの 無為を歩む



崖を埋める正座の少女に
風と青空は降りそそぐ
見えぬものこそ 見えぬものこそ
轟音のなか 動くものは何もない



右腕と
左腕のあいだをくりかえし
指の輪の陽
波を呑みつづける羽を見る


雨に明るく 胸に苦しく
昼は遠く
稲妻は稲妻を拾う
はたはたと こぼしている


水底から水面を見たときだけ見える楽譜には
すべてが書かれている
だから
見なかったことにしてもかまわない


花が曇から花を摘み取り
流れの上の花の上に置く
何もない光 何もないまま
枝と枝のはざまへと降る




























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