エニー・エンター・キー/mizu K
 
めていると
となりでおじいさんもうれしそうに眺めている
これは、あれだな、そうさな、とおじいさんがつぶやくので
なんだ、とエニエンがたずねると
これは、鍵盤だ、とおじいさんはいう
キーボードとはなにさ、くえるのかい?とエニエンが問うと
こういうことさ、とおじいさんは木炭を拾ってきて
タイルのひとつひとつに奇妙な配列で文字をつらねる
Q、W、E、R、T、Y…
ク…、クウェルティ?エニエンが苦労して読み
食える、の名詞形か?と思っていると
すきな文字を押せ、とおじいさんが言う
なんだよ、それ、とエニエンはかえすが
すきな文字を、押せ、とおじいさんはくりかえす
じゃあ、
エニエンはとりあえず左端のQのタイルを押してみた

するとQと書かれたタイルが
がっこん、と音をたてて
スイッチのように
落ちくぼみ
それから
それから
それから、Qにまつわる話がここにはじまる



エニエンの多岐にわたる物語のプロローグ、おわり




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