言葉と生きる/とんぼ
ものを知るほど
自分に語れないものが増えた
声にしても唇の先ではじけて消える
子どもの頃は
うすくても
熱を持っていたから
声が空気の中を通っていけたけれど
自信をなくしてようやく
きちんと大人になった気がする
根拠のある自信のなさを構えて
ここからどう動くか動けるか動けないかが
大事なんだろうなあなんて そんなことを
子どもの頃は
考える暇もないほど
走り回っていたのに
強みだった言葉の熱を失くして
いま欲しいのは強度だ
たぶん長い時間がかかるんだろう
急いで手に入れなければ間に合わないように気がしているけど
ずいぶん先になるだろう
自分の心を知らない人たちに伝えようとするのは難しい
どんな酷い目に合わされてもいいという覚悟の準備を
ちゃんとしてきたつもりだったけど足りない
書けませんと言うくらいなら
両手の指を全部折って 神様に返す
そんな気持ちでいたわたしに
戻りたいのです
進みたいのです
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