開花未遂/本木はじめ
 
暖色の山の合間の分岐点開花未遂で冬がはじまる


先輩と呼ばれし秋の公園の噴水近くのベンチにも冬


少年が少女に呼ばれ午前二時 雪の黒さを確かめている


ひとひらの雪を蛍とたとえても明日という日も流れゆく水


あらいぐま月の輪熊に出会う夜あたたかきお茶一杯の幸福


穏やかなぬくもりである土のなか冬眠しているぼくらの偶然


雪のうえ転がる夜は何もかも愛してしまいそうになる冬


空中を散歩している僕がいる目覚まし時計も凍りつく朝


美しく咳をしている雪原であなたの口から 赤 黄 白 蝶

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