虫がふふんと鳴いた/シホ.N
 

僕らの口のきき方や
僕のどもり具合などにも
つばを吐きたいはずなのだ
でも奴ももうもうろくしているので
吐けやしない
ペッと口をすぼめるのは行儀が悪くて
吐けやしない

奴ももう
もうろくしているので
僕らの大事な虫を見逃している
見過ごしている
今だって
どんな世にしろ魂の、
虫は、いる

僕はつばを吐くかわり
口笛ふいて
今日もひとり
馬鹿なバッカスの夢になる
僕の虫は安酒でもいい感じで酔えるのだ
ふふん
僕はジンの臭いの息で
奴の鼻の真っ先に
口笛ふいてみせるのだ

これが僕の勝鬨であり
または負け惜しみ


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