宙と姫/木立 悟
樹が樹である理由のひとつ
遠のけば近づく光のひとつ
空の切れ端
うなじになびき
夜と鈴しか通らぬ道に
いつのまにかできた水たまりには
ずっと雨しか映らない
雨ではないほど遠くまで
無言が無言に触れては光り
立ちつくすものの脚を消しては戻す
窓に原に吹く
うすむらさき
空が斜めになると
涸れ川は静か
石の下の鉱
水と言葉
冬が分ける日
向こう岸に
少しだけ早く来る夜の
四月は常に欠けている
かぎ裂きの影
求めた以上のものを失う
その羽の
その羽のおこす風を視る
剥がせばもどる
剥がせばも
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