五十日目の日記/縞田みやぎ
りそうなほどに増えている。あれはもしかして波頭か。どんどん高くなっていく水の中に,大きなものが見える。あれは,冷蔵庫だ。
まずい。逃げないと。
小走りに土手を行く。時折振り返る。さきほどの冷蔵庫が川をさかのぼっていく。次に橋の下をくぐってきたのは,半分に折れた船だった。
走った。
家のすぐ裏の土手からの階段を駆け下り,そのままアパートへ。まだ自宅の周囲は乾いていたが,あの波はきっとここまで来るだろう。2階に駆け上がる。猫たちが怪訝な表情ながらも出迎えてくれる。
どうしよう。逃げるか。
逃げるならもうさっきだった。来た方の橋は水没したから,行くとしたら今の橋。しかしあの波は橋
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