五十日目の日記/縞田みやぎ
だ敷地の外は腰までの水で「孤立」という奴だった。とかく自分の所属する人たちのところへ行かなくてはならないと思い,一瞬車を動かしたが,すぐに無理な深さになった。しょうがないので徒歩で水の中をこいで陸地を目指した。腰の高さより水が高くなると体が浮いてしまって歩けない(泳ぐような感じになる)ことを知った。水は臭くて冷たくて,ずっと歩いていると締め上げられるように痛苦しかった。にごってまるで中身の見えない油の浮いた汚水の底に瓦礫やガラスがたくさん散らばっていた。水から何とか出たくてブロック塀の上まで登ってみても,陸地としては続かず,また水の中に降りねばならなかった。倒れて浮いている木の電柱一本ですら,僕の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(29)