書き記さなければなにも残らないノートに/
石川敬大
れない腹いせに
わたしをどこかに攫ってゆこうとする
風
ゴーゴー
ザワザワ
と、やむことがない
単数形の海をわたって
複数形の樹々と街の辻々をふきぬけて
わたしの
わたしだけの
時間を奪いとって
どこへゆこうとするのだろう
まるで情け容赦のない冷酷な人格であるかのように
……と
それだけだ
泡みたいな想念だ
書き記さなければなにも残らないノートに
……わたしの
……わたしだけの
}
戻る
編
削
Point
(13)