書き記さなければなにも残らないノートに/石川敬大
 
れない腹いせに
わたしをどこかに攫ってゆこうとする

ゴーゴー
ザワザワ
と、やむことがない
単数形の海をわたって
複数形の樹々と街の辻々をふきぬけて
わたしの
わたしだけの
時間を奪いとって
どこへゆこうとするのだろう
まるで情け容赦のない冷酷な人格であるかのように

……と
それだけだ
泡みたいな想念だ
書き記さなければなにも残らないノートに
……わたしの
……わたしだけの






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