残像/木立 悟
 


歩むもののまわりを
木がまわり
林がまわり
色になり
光になり
やがて塔になったとき
音ははじめて姿をひらき
共に歩むものとなる



抱かれたままでいる
何かに ずっと
抱かれたままでいる
毛のような何か
糸のような細い何かに



流れに沿ってつづく道
色と光の像の道
渦と歪みの歩みの上に
さまざまな音に飾られた
たくさんの背を映しだす



土に残る寂しげな影
羽をひろげたかたちの影を
言葉は明るく流れてゆく
塔は川に
川は塔にすばやく映り
枝の名残りのかがやきは
歩むものの背に降り積もる



左目の視界の端々には
赤や黄や黒の火があり
蝶のように花のように
つづきつづける自身の姿に重なりながら
ゆうるりとゆうるりと動いている



河口の光が
塔に次々と入り込み
残るものも 進むものも
細く抱きしめる姿となり
巡りつづける背をうたう
歩みつづける背をうたう








戻る   Point(3)