有視界飛行/木屋 亞万
 
凶暴な
風に太刀打ちできていない
気温は肌を極細の針で刺すようにつめたい
それでも太陽の陽射しが地上よりも激しいのは
少しでも太陽に近づいた証拠なのかもしれない

このまま地上に降りずにずっと
空を飛んでいられたら
鳥のように風に乗って
高度を保ち続けられたら

 私はもう鳥になってしまいたい

このまま海を飛び越えて
自由に世界を飛び回ることさえ
人間には難しい世の中なのだ

 もしも本当に鳥になれたなら

人間である私には
夢のまた夢ではあるけれど

帰る場所もなく
私の着陸のために
用意された場所もない
誰も待ってはいないのに
私は地上へ降りていく

また来るよ、空へ
何度でも何度でも
いつか鳥になる日まで

私が帰ってくる場所は
空以外にはないのだからね
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