増えない電卓。/電灯虫
手を離して得られる豊穣さもあって
電卓から加算の記号を外してみる。
ゼロから始め、その終わりがない無限を終局点に見据えて
得てして努力と比例しない努力を費やし、雀の涙でも加算してく。
得られた「はず」は許されず、得られる利益は逃しちゃならん。
ゴールドラッシュというには金脈が足りないから
穴を開けてでも金額を求める。
そんな裏側には底が見えない喪失が
我を避けよ避けよと急き立てて
塗りつぶされていないマスだけしか眼に入らなくて
身動きとれる足場がない。
押しすぎで,加算記号が削れて消えそう。
受身にも受身を選んだ、その選択の力強さがあるように
ゼロの保持だ
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