春/藤村 遼太
 
冬が終わり、季節が春へバトンタッチする

強い北風が吹き終わると、それが春になる合図

寒さに凍えていた木々の枝枝に小さな、つぼみがひとつ、またひとつ生まれて

しだいに木々は青々と色づく。

その中で僕はどうしたのだろう。

目の前の風景は希望に満ちたように鮮明になっていくのに……。

僕のこころは、モノクロのまま。

過ぎ去る季節と一緒に、僕は置いてけぼり。

暖かな風が、春の訪れを僕に告げる。

それを聞いても僕は歩き出せないでいる……。

みんなは、どんどん先へ進んでいく。

嫌だ!お願いだ。置いていかないで!

お願いだから、置いていかない
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