オオイヌノフグリ/たもつ
 
  
 
他に何もない日
野原にひとつ
屍があった
今にも、ストン
と落ちてきそうな空を
屍はただひとつで支えていた
誰が手向けたのか
頭の近くに
オオイヌノフグリが咲いていた
たとえその身が融けたとしても
空が落ちることはない
孤独な仕事は知らない間に
別のひとつへと引き継がれていく
やはり他に何もない日に

  
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