ひとり生きてゆく(ということ/アラガイs
い込んだ山裾の道路にはタイヤの跡はない
真っ暗な舗装を歩いている
後ろから頭を過る幽かな波動は随分まえに通り抜けたトンネルからの悲鳴
)よからぬものの気配がした
きっと風に擦れ合う笹の葉だろうと、振り向く勇気もなく 急ぎ足になる 。
そういえば、朝から何も口にしてはいない
しばらく歩いていると 笹藪の向こうに灯りが見えてきた
入り口の古い門柱には正体のわからない二体の像が立っていて
足音を響かせる度に、腕が左右に動き出すように見えてくる
息を捨てゆっくりと門の中へ足を踏み入れたとき
一台の車が猛然と通り過ぎてしまった 。
止まらない水の音は倍音に響きあい、未知なる眠りを妨げている
米山くんは本当に死んだのだろうか
時々理由がわからなくなる
蛇口を止めるべきか
水をあきらめるのか
ゆっくり眼を閉じると
一輪の白ユリが煙に微笑んだ
わたしはいまでもその答えを探している 。
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