橋は、スイッチである/石川敬大
のも
ボコッ
ベコッ
ガチャン
しばらくの静寂……は、どうしたのだろう
……するとふいに、軽トラックがあらわれて荷台に
つぶしたアキ缶入りの袋を抛りこむ荷台に
バーン
ガチャ
バンバン
ダンボールを叩きつぶす音がまじる
どこからきたのか女たちの姿もあって
なにをしているのか……まるで、わからない
隔てられたら指一本入れられない
*
母は晩年、補聴器をしていた
雑音がうるさいと耳から外して放心していた
そう、みえた。歯がゆくてかなしくてイライラしていた
ぼくを
ふくめた社会をシャットアウトしていた
*
埠頭から埠頭を無機質な物質でつなぎ無機質な道で結ぶ
すなわちそれがスイッチであるから
橋の下で
ラアラア喋っていた
女たちがまじる男たちにまじって放心の眼を遠く抛りなげていた
あのときの母のように
ぼくの姿は
異国のかれらにみえていたのかもしれない
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