fragmental tapestry/ねことら
古くなったクリアファイルは
表に細かな傷がついていた
ひとつ拾い上げて、爪の先で
かたかたと光の溝をなぞる
そこに流れていたものを確認したかった
旋律に音がないなら
ゆっくりと目を閉じて
幾枚も床のうえに薄くかさなり
クリアファイルは、平板で、人工的な
脆い海のように
春の青みがかった夕陽のなかで、しずかに
その輝度を増しつづけていく
さみしい、という針を
ほそくほそくこの水に穿てば
同心円状の輪がひろがって
そのひろがりかたをみおくっていた
いつまでも、いつまでも
/
フロ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)