fragmental tapestry/ねことら
 



古くなったクリアファイルは
表に細かな傷がついていた
ひとつ拾い上げて、爪の先で
かたかたと光の溝をなぞる
そこに流れていたものを確認したかった
旋律に音がないなら
ゆっくりと目を閉じて




幾枚も床のうえに薄くかさなり
クリアファイルは、平板で、人工的な
脆い海のように
春の青みがかった夕陽のなかで、しずかに
その輝度を増しつづけていく







さみしい、という針を
ほそくほそくこの水に穿てば
同心円状の輪がひろがって
そのひろがりかたをみおくっていた
いつまでも、いつまでも




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フロ
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