そんなことどうだっていい/ホロウ・シカエルボク
 
はハモニカを吹きながら
半ば砕けた男の顔を眺めた
年のころは二十代半ばだろうか、激しく泣いたような痕が頬にあった
ああ、ブルースは…ブルースは落下して砕けた、そんな風に終わりを迎えるブルースだって決して珍しいわけじゃなかった
その後の生体となってかれは雨に打たれ続けた
おれはかれほどに上手くベンド出来なかった
おれは約束をお終いにしてそこを離れた
ハモニカはなんとなくポケットにしまってしまった
そのかわり、傘を
かれの頭のあたりにかかるようにさしてきてやった
もうベンド出来ないことに比べたら
ずぶ濡れになることなんか大したことじゃない
ハモニカはまだ
死んだ男のものとは思えないくらいの熱を記憶していた
ポケットの中で発熱してるみたいだった
おれの約束はなんだったのかって?
そんなこと、どうだっていいじゃないか





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