幻薫/アラガイs
明日坊主が供養に出かけるのに雨は好都合らしい
この頃お隣さんに越してきた三十代の人妻がやけに気になってしょうがない
早い者勝ちにはルールはないのだが
面倒くさがりやが決まって肝心なところでエスケープしてしまう
これは水のなかで散々若芽を食い荒らした独身のラッコが新しい餌を見つけようと桟橋の桁から岩伝いに上がろうとして大きなタコの足に絡め捕られてしまう
そんな予感や気配などを気にしながらも役所の人妻あたりと密かに逢引きを繰り返す坊主のことなどは一向に気にはならないのだが
しかしこんな跌錆びた街の片隅に高野豆腐のようなクッションを曳きながらお互いの間を(こそこそ)と行き
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