在ったもの、在ったこと/
草野春心
在ったもの、
在ったこと。
窓のむこう、
ふかく呼吸している、
世界へと笑うこと。それが
ただひとつの望みだった、
きみと会って。
ぼくの心が、
時間をかけてふくらんでゆく。
言葉が在るということが、
こんなにも苦しい。
きみの影が、
部屋の床に伸びている。
在ったもの、
在ったこと。それは
ぼくの歩く暗がりのなかに、
ふえてゆく街の灯り。
戻る
編
削
Point
(3)