在ったもの、在ったこと/草野春心
 

  在ったもの、
  在ったこと。



  窓のむこう、
  ふかく呼吸している、
  世界へと笑うこと。それが
  ただひとつの望みだった、
  きみと会って。



  ぼくの心が、
  時間をかけてふくらんでゆく。
  言葉が在るということが、
  こんなにも苦しい。



  きみの影が、
  部屋の床に伸びている。



  在ったもの、
  在ったこと。それは
  ぼくの歩く暗がりのなかに、
  ふえてゆく街の灯り。





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