押したい背中/森の猫
 
 マリ子は中学生の時バレーボール部に入っていた。人気のアニメに感化され友人の雪と一緒に入部した。新入部員はボールなど触らせてもらえない、ひたすら校庭の走りとバレーの基本姿勢を覚える。その中には、腕立て伏せならぬ、指立て伏せがあった。他の部員たちは、平気で5本の指をグランドにぐっと立て10回20回とこなしていたが、マリ子にはできなかった、指が立たないどころか腕立て伏せもままならない。
 「高橋さん、指立てできないの。それなら、
腕立てやって。指立てできるように練習してきてね、基本なんだから」
3年の部長酒井先輩は、半ば馬鹿にしたような口調で言った。その隣には憧れている、芸能人のような東先輩がク
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