クラゲチアノーゼ/魚屋スイソ
スクリーンの少女が吐き続けている青いゼリーを唯一の光源とした地下室の底を 全身の血を逆流させるようなシンセサイザーの息づかいが 脈々と這い擦っている 水槽に閉じこめられたおまえは ガラスの壁を両手でひっかいて 雨降りの真似をしながら シーツの上で冷たくなった熱帯魚の瞳が反射する無声映画のブロックノイズに怯えている おれは火のついていない煙草を咥えたまま 視線を合わせてくれないスクリーンの少女を見つめていた ときどき黒髪をはりつかせた頬を弛緩させ 吐瀉物だらけの唇で何かを囁いているが 字幕は出ない 眠ることと 海の底へ沈むこととの相違について考える シンセサイザーに酸素を奪われ 呼吸を止めてみたい
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