夜に落ちる/木立 悟
両端から両端へこぼれる
曲線や
歪み
音や温度
どこへでもゆく
手のひらの斜度
細いもの 丸いもの
煙のち羽
光のち水
絨毯の上の恐龍と
黒い綿に似た春の熱
真んなかに居る音から 分かれては分かれる
言葉の色 ひとつがひとつに
黙り 礼をし
ふたたび重なり 昇りゆく
蒔いたものがどこかへと
消えてゆくその日
昼の模様 濡れた渦の先
言葉は 音を遠去けたのに
音は 言葉になっていた
原と原を越え たたずんでいた
羽や夜を
羽や夜の見えない場所に放した
鼓動のように 飛び去った
午後のつづきの
紙を噛んで
響きの色 鏡の色
金の布に
さらに濃い金で
夜が縫い込まれている
水の生きものが
空に立ち
花に運ばれるものを 見つめている
空と花は近く 私と私は遠い
手のひらは手のひらに
手のひらの斜度で こぼれこぼれる
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