ホリデイ/竜門勇気
色のついた絵の具を買って
窓に町を描きたい
雲を描いて
煙突を描いて
笑っている人を描く
指先がどこまでも自由になって
僕のつまらない話を聞いては
頷いてため息をついて
また透明をつくっていく
僕は色のついた絵の具が
欲しいんだ
欲しいんだよ
僕の部屋の窓の
外側にカーテンをひいた誰かが
見せている世界は
透明で寂しくて
人だらけで
いつも半分が笑って半分が泣いている
だから僕はカーテンを閉めるんだ
閉じたガラスの向こうを想像しているんだ
閉じた世界の入り口は
閉じた僕への入り口だ
向こうでは勝手な僕の偽物を作って
勝手な気持ちを交わしてる
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