菜の花のこと/はるな
のにしたいし、それがないということが不安でしょうがない。でも、それがどれなのか、まだわからないのだ。手に入れれば、それがこれだということはわかるはずなのだけど。たぶんなんでそういうことになるのかと言うと、わたしがまだわたしを知らないからで、わたしが、わたし自身をはっきりどういうものか理解することができるようになれば、それがどれだか、もう少し探しやすくなるんではないかと思う。
ほんとは、菜の花を、一緒にみたいと思った。
でも、終わったひとを思い浮かべるのはずるいから、蓋をしたのだ。
いつもそうして腐ってしまう。
誰かと幸福を分かち合うことを思い浮かべるのが、悲しいことだって、考えることこそが悲しいのに。後ろめたいこと捨てちゃって、分け合うことだけ考えられたらどんなにすがすがしいだろう。
天気予報では夜から雨が降ると言っていて、そうしたらこんなに仲間はずれな気持ちにはならないと思う。早く雨が降って、桜が散れば、おさまるのに。そういう身勝手な考えのままで、しばらく動けなかった。
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