菜の花のこと/はるな
。その模様はすこし褪せていて、皮膚にしっくりとなじんでいた。黒一色で、さわると、ほかのところよりすこし温度がひくかった。わたしは、その子のことをとても好きだったけど、そのトライバルはあまり好きではなかった。わたしの知らないものだったから。いくら裸で抱き合っていても、その模様をみると、わたしは置き去りになってしまった。好きだよと言ってくれるひとだったけれど、こころはしんとなった。わたしの知らないところで、わたしの知りようもない心もちでその模様を彫りこんだあの子。知らない、というのは恐怖で、でもそれを知ろうとするほど勇敢ではないから、あの模様と親しくなれる日が来ないことはわかっていた。そうしてその子と
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