雨に踊るものたちは皆、笑っている/木屋 亞万
 
薄曇りの空
昼の明度が低い
苛立ちを泡立てたような
街の雰囲気のなかを歩くと
泡に包まれた静電気が
渇いた頬にぱちぱち当たる

降るならば降ればよいのに
水の腐った匂いがする透明傘を片手に
空を見上げて
そう思う

湿度が高まっている
風が生温かい
遠い街ではもう
雨が降っているかもしれない
匂いには雨の気配がある

アスファルトの
ゴツゴツした石の隙間に
溜まっている小さな砂粒が
濡れていく匂いが
僕の育った町の雨の匂い

校庭のグランドにぽつぽつと
雨粒が落ちてくる景色が懐かしい
雨の日の校庭には即席の川ができて
平らかな土をかき乱し

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