波よ 波よ/佐藤伊織
また外部とつながるアンテナが鈍くなってきた。意識というのが普通の人がどうなのかよくわからないが、自分の意識が一歩だけリアルな世界から足を引いてしまう感覚になる。普通に息をし生活している自分がゆっくりと遠くに離れていき、目がすこしづつ閉じられていく。何もみえなくなったまま時だけが過ぎていく。これで良いんだと僕の身体が囁いている。ああ、これが生きながら死ぬということなのかもしれない。自分の意識だけが先に終わりを迎え、あとは僕の分身が僕として生きてくれるのなら。なんの不満があるというのだろう。しかし、何度も何度も僕の目は閉じられていたことを思い出す。死と生が一つの身体に繰り返し押し寄せていくように、波に
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)