坂の途中/草野春心
 
  もしもし、
  春になって
  やさしい色の花で
  世界は染まっていったよ
  せつないときには泣いてもいいかい



  もしもし、
  なんとなく今朝
  中川家の漫才をみたよ
  たのしいときには
  おなかいっぱい笑っていいかい



  ちいさな
  箱につめて
  燃して
  骨を埋めて
  手を合わせて
  それですべては
  終わったのであって



  靴紐が
  ほどけて
  僕はしゃがみこむ
  つめたい風が
  ぬりかえられてゆく
  生きてゆくことのように
  坂道はつづき
  日はすでに、
  上へ……



  上へ



  探しにいかなきゃなんない
  僕だけの日々を
  僕だけの言葉を
  もしもし、
  平気かい
  もう君を
  見つけてしまったよ


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