聖域/salco
ような思いをせずに済んだのを慰めにしている
あれから変わらず空の下を飄々と歩いてくれていたらいいと
ずっと思い描いている
近しい何人かがそこへ行った
母方の祖父母も父方の大叔母も、今また従兄のトモにーにーも
交通事故の後遺症と損なった肝臓から解放されて
彼の含羞と厭世を脅かさない語りかけをしているだろう
皆が再びまみえるのも、もう遠い先の事ではない
こうした慰めの空想はしかし
余人の関与や宗教の介在を要するものではないのだ
その場所は
家族というサークルの中空に温存され、実在する
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