[不眠の朝に]/東雲 李葉
 
暗い海底に光が射す時間
窓の外、さえずりが近く聞こえる
不愉快な目やにをこすり落として
バイクの音を少し早い目覚まし代わりにでも
同じ歌ばかりを繰り返すコンポ
聞こえていない振りをしなくても聞こえないのは誰の声
生きてりゃ自然に出るよな生活音にさえ
気を遣ってひっそり息を潜める毎日だ
爆音出して走り回って
ガードレールぶつかって
腕の二、三本吹っ飛ばす人生は送れないや
せいぜい思い出したように低く唸る冷蔵庫がお似合いだ
海底から水面へ浮上していく部屋
ここが宇宙に浮かぶ巨大コロニーだとしたら
強化ガラスの外はどんな色をしているだろう
一生のほとんどを月面着陸に費やす
そんな人生はアリかしら
無音の中心で愛を叫ぶ
そんな映画を待っています

さてと、そろそろ顔を出して
思い切り酸素を吸い込んで
音を立てないようにそうっと菓子パンでも温めようか
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