紅い尾鰭/
渡 ひろこ
温い水はまやかし
居場所など元からなかった
残されたのは怠惰と逃避で汚れた茶色い水
嗚呼、息が苦しい
水面で口をパクパクさせて呼吸する
いっそのこと深く潜って
静かに横たわる寡黙な流線型になって
このまま誰にも知られず朽ちようか
それでも身体がふわりと浮いてしまうのは
覚悟がない中身が薄っぺらなせいだろう
そう、留まるとますます濁って先が見えない
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