紅い尾鰭/渡 ひろこ
 



温い水はまやかし
居場所など元からなかった
残されたのは怠惰と逃避で汚れた茶色い水


嗚呼、息が苦しい
水面で口をパクパクさせて呼吸する
いっそのこと深く潜って
静かに横たわる寡黙な流線型になって
このまま誰にも知られず朽ちようか
それでも身体がふわりと浮いてしまうのは                     
覚悟がない中身が薄っぺらなせいだろう                     
                                        

そう、留まるとますます濁って先が見えない                   

[次のページ]
戻る   Point(19)