壺の音 /
服部 剛
道の遠くから
何やら呟き続ける男が歩いて来る
すれ違う瞬間
「答は空(くう)だ、答は空(くう)」
繰り返す呟きは背後に小さくなってゆき
遠ざかる彼の背なかも小さくなってゆき
口をぽかん、と開けて立ち止まった私が
壺の姿で空を仰げば
青い空の向こう側から
不思議な風が口から体内へ吹いて来て
私は壺の、楽器になる
透きとほった魂は膨らみ
発々と、漲(みなぎ)り始めた
戻る
編
削
Point
(4)