納骨の日/ゆるこ
 
うになぁ」

いつの間に
私の横に寄り添うように存在していた祖母は言う
硝子のような瞳で囁く

「かわいそうになぁ、かわいそうに」


黒蟻が列を成している
暖かい春の日差しが私を避けている

祖母はいつの間にか消えていた
足の悪い祖母は今頃車で休んでいることだろう

398円で買った花を添える
そこに母の好きな花は一本も無い

形だけの合掌


かわいそうになぁ、


祖母の声だけがそこに漂う

桜のない墓地に、ただ、漂う
これから季節を何度越えても
漂いつづけるのだろう
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