揺れるひと/恋月 ぴの
 
水面を見上げると
ちいさなおんなの子の顔

こちらの様子が気になってしかたないのか

大きくなったり小さくなったり




わたしだけの世界
酒屋さんの軒先に置かれた古い火鉢

最初は他にも仲間いたけど
カラスに狙われたり
狂ったような嵐の晩に火鉢の外へと流されていった

金魚藻とホテイアオイ
火鉢の底には竜宮城のおもちゃらしきもの

ひらひらとゆれる尾びれ

たしかに自由気ままではあるけれど
その日暮らし
かりそめの自由ってこともある

いつ野良猫に襲われてしまうのかも知れないし
酒屋の店主に火鉢ごと片付けられてしまうかも知れない


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