出郷/モリー
碧か、群青か、言いようのない空を背にして
影になった桜の木が現れた
白いはずの満開の花は淡い紫色に霞む
手前の細いガードレールも同様に染まっている
運転手が鼻声のビートルズを披露する
ああ、春だわ
景色も車内も、出発点にはちょうど良い
メロドラマを地で行くような彼
涙するタイミングはここだと言わんばかりに
減速してみせビブラートをかける
遠ざかる並木、右手があつかった
お父さん、娘は遠くへ行きますが
きっと元気に頑張ります。
故郷を見送りながら立志したのも束の間
縦揺れと共にトンネルに突入する
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