種屋/山人
 
る大きな麻袋が目についた。「アレは何ですか?」と訪ねると、店主はおどけたように首を傾げ、「アレは、ちょっとした非売品だよ」そう言った。「どうしても欲しいという人には相談させていただいているが・・・」口を濁した店主であった。
 どしりとテーブルに置くと、中から菓子の乾燥剤のような小袋がたくさん詰められていた。ひらひらした顔の皮をめくり、店主は饒舌に話を始めた。
 うちの客は見てのとおり変わった客だが、普通の人でもある。むしろうちの店が変わっているのだ。だが、最近はあまり売れなくなった。乾いた風・・などは、以前は飛ぶように売れたが、今は半値でも売れない。次から次へと新しいものが生まれていっては死んでゆく。今は非売品だがこれを売るしか生き残る道はないのかもしれない。
 そう店主は言った。
 見るとその小袋には、ガムテープが張られていて、商品の名前が隠されているのだ。
 ただ、こいつはね、あまり多く使うと本当にやばいことになるかも知れない、つまり適量を用いるってこと、折角だからあんたに一袋あげるよ。
 そう言ってガムテープを剥がすと、○○○乾燥薬、と書かれてあった。

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