江津湖に寄せて/草野大悟
火の国の水は
枯れ果て、
哀しいほどに
湖底をさらし
汚泥にまみれ。
では
何をしてきたか
言ってみたまえ
無粋の君らよ。
やたら議論を重ね
多くの人の汗を浪費し、
あちら言葉の異物を
造りたてただけではないか。
言ってみたまえ
この湖を
ここまで陸化させた
君らの夢とやらを。
青々とした芭蕉を
土色に変えた
君らの繁栄を。
水の位置は
君らの思惑に反し、
いまや
負の思考を具現しているではないか。
にせ金に固まった
枯渇した平和など
だれひとり望みはしなかった。
四十億年を
五十年で破ることなど
だれひとり望んではいなかった。
さあ
言ってみたまえ
君らの美学とやらを、
にせ金造りの手の内を
さあ
君の思惑を越えた
何ものかに言わせてみたまえ。
早春の湖を
光を持たない影と
影を知らない光が
火のように歩いている。
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