廻る/殿岡秀秋
酔い
記憶が途切れている
グラウンド
前を走る人を抜くとき風になる
走馬灯
覗かなければただのぼんぼり
車輪
一本に見える
山の手線
書斎兼寝室
乳房
小学校から帰る時間が早かった日のこと。母はまだ寝ていた。ぼくがふざけて母のおっぱいをつかんだ。両親に連れていってもらった映画で、女優の胸の割れ目が見えていたのが印象にのこっていた。映画のおっぱいだといって、揺すると母は喜んだ。出社の準備をしていた父がぼくの首を掴んだが、強い力ではなくて、すぐに手を離した。父が困ったような表情をしていた。
目
雲が背中にくる
指
体の芯が動く
星
見続けるほどの根気がない
首
監視塔
缶
音を立てて走っていく
メリーゴーランド
目があう手をふる馬がお辞儀する
庭園
二人の隠れ場所を探す
腰
臍は静止している
運命
まだだ!
戻る 編 削 Point(5)