故郷(ふるさと)/……とある蛙
朝から酒を飲んでいる
涙をこぼして飲んでいる
都会の空地の駐車場
道行く人は見ない振り
電信柱のゴミの横
フェンスの縁に片手掛け
地べたに座り飲んでいる
通勤客は足早に
見て見ぬふりのホームレス
涙をこぼして呑んでいる
思いは北の故郷の
港と狭い山の畑
家族はだれもいない土地
それでも涙が止まらない
故郷の街は冷たくて
彼の居場所は無かったが
辛い仕事は嫌になり
結局都会の片隅で
猫と一緒に残飯を
あさってその日を過ごしても
いつか帰れるその時を
微(かす)かに思う毎日が
生きる縁(よすが)のホームレス
結局都会の片隅で
瓶から集めた残り酒
朝から酒を飲んでいる
涙をこぼして呑んでいる。
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