斜陽/A.Yusa
陽の傾きが一番いい頃合いを見計らって写真を一枚残して置こうと
額に収める程の物でもないけれど
人生の飾りにはなるだろう
きっといつの日にか微かに笑いながら眺める日が来ると
今の、この陽射しの輝きと傾き具合こそが自分に相応しくて
此処に至る迄の道程と残された時間の記憶として
まさに
この一枚は今の僕その物で
失われ行くものと
失われたものの
褪せて行く色の移ろいを
一瞬に閉じ込めるなら
こんな風になるのだよと
鉄格子のない監獄のような部屋に埋もれたまま
ひっそりと遠慮がちに息をして
言葉発せずに
手のひらサイズの思い出作りに励む
抜け出せない場所から眺める陽射しには
南欧の空が広がり
亜麻色の髪の光に透けた純情が溶けて滲む
僕のフィルムに僕自身の姿はなく
僕の写真は
緋色の比喩の内に宇宙を抱いて
刹那の中に物語を記す
描いた景色の数だけの物語を記す
降りて来ない空に手を翳して永遠を泳ぎ
、沈み行く陽に向かい明日を願う
(まだ途中)
まだ終わりませんようにと…。
戻る 編 削 Point(1)