誰かぼくにファミコン買ってよ/竜門勇気
西へ向かう電車に乗ると、すでにひとっこ一人いない電車に乗って風邪をひいてめんどくさい。
羽をすっかり伸ばしてしまうと残りは二人になった。
まつげの手入れに余念のないつり革の住人がソフトシンセサイザーのバイナリを読み上げている。
やがて終わりいく世界の光景をメモ帳の中で脚色しているのは世界で唯一の弁護士。
16で既に一人ぼっちで孤独を感じないために必要な書類の書き方を心得ているような男。引っ掻き回す魔術師。
爪の中に引っかかったロボットのかけらを金色の八重歯ではじき出しながら旅には終わりがないということをクドクド喋っては、腐った得体のしれない果実をかじる。
ポットの中まで検閲を受
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