さみしいお昼/木屋 亞万
 
を見上げると
イワシの群れが
腹をギラギラさせながら
太陽をさえぎるように泳いでいる

あ、
と思って見ていたら
イワシの群れの後ろから
大きなクジラがやってきて
大口開けてイワシを食べた
窓はカタカタ揺れている

クジラの口が閉じるたび
イワシが散り散りになって
地鳴りのような風が吹く

ひとしきりイワシが食われ
クジラが去ると
元の陽射しが戻ってきた
何事もなかったように私は
弁当の続きを食べる

雲ひとつない空
あのイワシはきっと
クジラに追われながら
風に乗って海からきた

あの銀色の腹に触れば
春の空気のようにつめたい
食べればさみしい味がする

クジラがお腹に溜めていく
何匹分ものさみしさが
私のものより多いから
今日のお昼もひとりきり
クジラのように豪快に飯を頬張る
うん、だいじょうぶ
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