リライト/木屋 亞万
 
CEとENTERのせめぎ合い
まとまった文章を、ドラッグの黒い影がごっそり消し去る
そこにはリライトの痕跡すら残らない

完成してから印刷すれば
真新しい紙に判を押したように言葉が並ぶ
そこには私という存在の匂いは
ほとんど消えてしまっている

結局何を書きたかったのか
黒鉛をゴムを紙をICチップをプラスチックを金属を
そして電力と視力と知性と時間を浪費して
私は何をすることができたのか

私は心を書きたかった
心を絵で描くことができない私は
言葉でならそれに近いものが書ける予感があった

私が書いた文章を
誰もが読まずに食べるとしても
その文章は良いにおいをしていて欲しい

そのために今日も
黒鉛を紙に擦り付ける
指先でプラスチックのボタンを叩く
一人静かに目を閉じる
ふさわしい言葉が何なのか、自分に問いかけ続ける

文章を書くことは私の宗教である
言葉をつむぐことは私にとっての祈りである
届く届かざるに関わらず私はそれを繰り返す
それが正しい
今の私にはそれだけが正しい
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