連れて行かない/salco
 
 西日が明るい内に黙々と、母娘はガレージセールをしまい出す。陶磁器
がカシャカシャと、昨日と同じ音で擦れ合う。
 週末と祝日の三日間、足を止める者は滅多にない。他家の廃品を漁るよ
うな構えでもない界隈、二時間に一人か二人、年配の主婦が
「あらぁ、きれいね」
 と、挨拶を述べてから自転車のスタンドを立てるぐらいだ。それで、ス
ポードのカップ&ソーサーが一客で二千円だと知ると、讃辞だけを置いて
去る。その都度、
「あら、じゃあ頂いて行くわね?」
 『ご自由にどうぞ』の段ボールの中だけが空いて行く。

 娘は終始、客慣れた老母の傍らで俯いている。四十三になる。土気に腫
れ上がって
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