銀の春/ソラノツバキ
銀世界にばっ と
傘を広げ
足元の銀をざっ と
凍てついた湖に浮かべた
微笑みも
溶けることはない
世界は銀と冷たかったから
女は笑えなかった
ここでひとりだった
銀はほこりをばらまいて
どろどろに黒くなることもなかった
燃やすものを持たなかったから 女は
燃やそうとされなかったから 女は
銀世界にばっ と
傘を広げ
足元の銀をざっ と
凍てついた湖に浮かべた
微笑みも
女の一歩だった
銀にまじった黒を
すくって見つめた
銀河を
知った途端に滑った湖の感触が
ガチ と女を犯した
赤色が
ぷうっと浮いた瞬間に
女は恋した 別の女に
女の放ったわずかな熱が
銀を包んで溶かしていった
吸い込まれた手の中の銀河に
女の赤色がそっとかかると
女は芽吹いた
星の消えていくまぶしさに きら・・・と輝いて
銀にぱっ と葉を広げ
足元にあった微笑みは
今頃 にこりと溶けだした
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