Land Scape Goat/雛鳥むく
 
わたしの誕生

あらゆる
病理というものを
内包した
神話を
空中庭園から
突き落とすわたしは
青く燃えあがる
アスファルトのうえに
突き落とされたかった
どうせ血は流れない





わたしの背に
連綿とつづく原野
そこに暮らしていた
一匹の仔兎が
今夜
死にました

という
あざやかな寓話を
包帯にくるんで
玄関の扉に
吊るしておきます
けれども街には
水没のはじまりを
告げる鐘の音が響き
人々は
そもそも 兎が
うまれることのなかった世界に
黙祷を捧げていたので
わたしはひとり
兎を追悼する
準備にかかりました
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