詩作を続けるために/……とある蛙
たった一つの言葉が言いたくて
書き始めた詩が
僕の手を離れて宙に浮かぶ
こんな筈では無かったと
何回も書き足して
つなぎ止めようとしたが
ますます詩は僕の部屋中に拡散し
言いたかった一つの言葉が腐って行く
失われて行く
たくさんの詩が部屋の外にあふれているが、
あの言葉はその詩の中には無かった
たくさんの詩は
作者をゴテゴテと化粧するものか
作者の身を隠す盾でしかなかった
たった一つの言葉はそこには無かった。
たった一つの言葉を探すために
僕は詩を書き続ける
たった一つの言葉を
戻る 編 削 Point(15)