君が腕を切った/はるな
君が腕を切った
赤く腫らして痛い痛いと振り回すので油をつけてやった
君が腕を切った
赤黒い血がほんの少しだけ滲んでいた
瓦礫の下からは
今日も顔のわからない人間が出てくる
積み重なった人間の上にまた瓦礫が積み重なり
幾重にも幾重にも積み重なり
その上を分厚い地面のように歩いている
君が腕を切った
分厚く平らになった地面からは知らない匂いがする
君が腕を切った
君の腕を切った
波は誰にも頼まれずにやって来た
それが波と君との違いかもしれない
空はもともとだだっ広いのか
春はこんなに寒かったか
君が腕を切った
昨日まで崩壊を口にしていた
べたべ
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