嘘だらけの夜に願うのはそれだけだ/智鶴
さら嘘だなんて何を言ってるんだい
眼を伏せて口を噤んで
おまけに耳まで塞いでさ
逃げ出すには遅すぎる
僕の足元に転がってるのは何?」
一瞬だけでも思い出した
それがアルコールの匂いなのか
ナッツの湿度かは分からないが
信号の点滅と同時に思い出したんだ
この信号と
このステレオと
その時にはなかったアルコール
湿度を確かめ合っていたんだ
転がっているイヤホンにも見覚えがあって
魅力なんてない
満ち足りているこの夜に
ほんの少し憂鬱に染まって
君に会いたいと強く願った
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